シリンダーボーリング

シリンダーボーリング オーバーサイズのピストンを使用する時に
ピストンに合わせてシリンダーを拡大する作業。
この作業は自社ではやってないので外注に出す事になります。

外注に出す前にやっておかなければいけないのは まずは ピストン計測。
20℃の恒温室で計ります。なぜ 20℃の恒温室で計るかというと
温度によりピストンの直径が変わってしまうからです。
ワイセコ製 鍛造ピストン(80Φ GSX1100R用)で実験したところ
1℃で0.0015mmの膨張が確認できました。
恒温室で16℃から計り始め(非接点温度計にてピストン計測)35℃まで
計測した結果です。

冬に計測した場合と夏に計測した場合とでは温度差30℃とすると
なんと0.045mm変化する事になり ほぼ ピストンクリアランスと
同じくらいの値になってしまいます。

実際に計ってみると4気筒の場合 ばらつき があり(±0.01mm位)
一番小さいピストンと大きなピストンの直径差が0.02mm
を超える物も存在します。
セットで来てしまうものなどで仕方ないですがね。

計ったなら今度はどのピストンがどの気筒にするか決めます。
空冷エンジンだと 両端 2気筒(1番、4番)と真中 2気筒(2番、3番)
とでは走行風の当たり方が違う為膨張率が変わってしまいます。
水冷エンジンでは水路により膨張率が変わります。
ラジエーターからの冷却した水がどこから入りどこを通ってどこに抜けるかを
考慮します。
車の直列6気筒のエンジンで前から冷却水が入り後ろに抜けるタイプになると
だいぶ変わります。
ピストンクリアランス自体を変えることもあるくらいです。
ピストンクリアランスもメーカー指定のクリアランスにするとは限りません。
慣らし終了後 物によっては0.02mmから0.03mm縮むピストン(変形?)
もあり経験、ノウハウ、実験データーによって決めます。

このデーターを元に外注先の内燃機屋さんに出します。ここが一番重要
今までに何十件の内燃機屋さんに出しましたが かなり差が有ります。
雑誌に数多くでてるとか 人の噂も 全然 あて にはなりませんでした。
自分で探すしかないと。
後は その内燃機屋さんの誰が担当するかによっても変わってしまいます。
同じ機械で加工するのにね。

加工出来上がってきたら 指定のクリアランスになっているかを
実際に計測します。 表面の仕上がり具合も(クロスハッチなど)
今の内燃機屋さんの担当者はかなり信用してますが
以前出したところのもので ひどいのもあり クリアランスばらばらで
斜めにボーリングしてあったものもあった。3回やり直させたが
寸法出ずに けんかして二度と発注しなくなった。
もし 後計測しないで組んでしまったとしたら とても恐ろしいことです。

計測したら データー表を担当者にFAXしてます。
FAXする事で 当社は後計測してますよとアピールするんだよ。
良く仕上がっていたら お礼の文も添えてね。担当者との信頼関係も
大事です。

できれば ダミーヘッドボーリングしたほうがいいですよ。
シリンダーとはシリンダーヘッドとクランクケースに数十トンで
挟まれているんだよ。
真円にボーリングされてても数十トンで挟まれれば変形します。
ダミーのヘッドとクランクケースを装着して変形させたものを
ボーリングするのがダミーヘッドボーリング。
装着料取られるが どうせだったらダミーヘッドボーリングにしましょう。
(ダミーヘッドない車種もあるので要確認。別途料金で製作可能)

今出してる内燃機屋さんの工場内の温度は24℃に保たれてる。
(4℃の違いはちゃんと修正してます。)
工作機械も電源入れて指定温度になるまで機械の暖機していた。
このような気使いがあるから いい仕事ができるんだなと感心した。

ただし今、エンジンオーバーホール受けてませんけど単品加工なら
受け付けてます。